奏法 


立ち方

 ヴァイオリンを弾くうえで一番大事なことは、立ち方です。
 足を肩幅以上に開いて、足、腰、肩の線がねじれないようにして、体重は両足に均等にかけましょう。体重を爪先にかけるのは猫背の原因になるのでやめましょう。


脱力

 楽器を構えるときに一番大切なことは身体に余計な力を入れないことと、呼吸を止めないことです。楽器は肩に載せるもので、顎で押さえるものではありません。また右手も脱力が大切です。必要な力は入れなければいけませんが、無駄な力は抜きましょう

 脱力と関連して、楽器や弓を持つ時に手応えを求めないことが大切です。たとえば楽器を鎖骨に載せた時に、あごで楽器を押さえないことです。あごはあご当てに載せるだけです。また弓も強く持たないことです。楽器も弓も支える感じで持つだけにしましょう。


楽器の構え方

 まず身体の重みが両足に均等にかかるように立ちます。それから左腕を前に出し、左肩を少し前に出します。
 ヴァイオリンを上から鎖骨に載せます。(楽器を身体に沿って下から鎖骨に載せてはいけません。)顔は正面を向いたまま頭を後ろに引き、首を左後ろに傾ける。こうして楽器を上げ指板を水平にして、左肘は前に出すように構えます。
 楽器の方向は正面から左へ約45°が普通です。


弓の持ち方

 弓の持ち方の練習は写真のようにボールペンなど(写真はApple Pencilです。)ですると良いです。
1.人差指:指先から2番目の指骨 中指:指先の関節 小指:指先がペンに触るように載せます。

2.親指を中指の反対側に置き弓を挟む。

3.手を回して弓を持つ形にする。


弓の張り方

 皆さんは弾くときに弓をどのくらい張りますか?同じ弓でもほとんど張らない場合、少し張った状態、かなり張った状態でそれぞれ反応が異なります。どれが良いかは一概に言えません。この3つの張り方で弾いてみて自分の感覚に合った張り方を見つけて下さい。
 また弓によっても違います。弓によってはこれが同じ弓かと思うくらい変わることがあります。

 ただ弓の木が反対に反るほど張るのだけは絶対にダメです。急に楽器が乾燥するような時には是非注意して下さい。


弾けるようになるには

 人前で弾こうとすると、思うように弾けないものです。誰でも弾こうと構えた時にたとえば「大きい音を出そう」とか「柔らかい音を出そう」とか「楽器をしっかり持とう」とか考えています。たとえば「大きい音を出そう」と思っていると、無意識のうちに力むのです。これが習慣になると、構えた時から力んでしまいます。しかし本人はそれが原因だとは夢にも思っていません。
 こういうことは一生懸命上手に弾こうとする人ほど陥りやすい欠点です。こうやったら良くなるはず、という先入観念が思いもかけないところで邪魔しているのです。

 皆さんが悩んでいることを普段とは違う角度から先入観念なしにしてみて下さい。(「これは当然だよな」と思うようなことこそ見直して下さい。案外その当然だと思うことが悪さの原因だったりします。)出来ないからといって、気合いをかけるだけでは解決しないのです。


ヴァイオリン奏法に関する本について

 カール・フレッシュやガラミアンのような具体的な弾き方を書いた本ではなく、弾くことに対するイメージについて書いた本として私が読んで面白いと思ったのは、ドミニク・オプノというフランス人の女性の書いた「内なるヴァイオリン」(「演奏についての考察」という副題付き。音楽之友社刊)です。私がこの本が気に入っているのは左の写真の通りイラストがとても分かりやすくて要領を得ているからです。

 ただ残念ながらこの本はいささか読みにくいです。原書をフランス語が堪能な生徒さんに訳してもらいましたが、それでも理解し切れませんでした。その点を別にすると、この本の中には面白い指摘がたくさんあります。

 サルヴァトーレ・アッカルドの書いた本で、奏法に関する本とは言えない部分もありますが、前半の左手右手の章はとても参考になります。

 イヴァン・ガラミアンの書いた本で、音楽之友社から翻訳版が出ています。Kindle版もあります。それほど難しい英語ではないので、英語で読むほうがお奨めです。(写真がKindle版の方がきれいです。)