ヴァイオリン
現在の形のヴァイオリンは1600年の少し前にブレシャのガスパーロ・ダ・サロが作り始めたようです。(ディーフェンブルッカーという人が初めだという説もある)ダ・サロの弟子にマッジーニという人がいてこの2人がブレシャ派の名工です。
ダ・サロと同時期にクレモナでアマティーが仕事を初めました。クレモナには何人もの名工が輩出し、Amatiが5人、Stradivariusが3人、Guarneriが5人、Ruggeriが3人、Testoreが3人、Grancinoが4人いました。この中で特に重要なのが、Nicola
Amati、Josef Guarnerius del Gesu、Antonio Stradivariusの3人です。
Stradivarius(1644?〜1737)の作品は3つの時期に分けられます。
〜1686アマティの影響が大の初期の作品
1686〜1695ロングパターンと言われる時期
1700頃〜もっともStradivariusらしい作品(黄金期は1715年頃といわれる)
これに対してGuarnerius(1687〜1745)の方はつくられた楽器の数はかなり少ないですが、作品はやはり3つの時期に分けられます。
この2人をを継ぐクラスとしては、Carlo Bergonzi、F.Ruggeri、P.Guarneri、J.B.Guadagnini等色々います。クレモナ時代の最後の名工と言われるのが、Lorenzo
Storioniです。この後ではPressendaが良い楽器としてもてはやされています。
イタリアの楽器に対抗してフランスでもたくさん楽器が作られました。フランスのトップクラスの楽器作りはNicolas LupotとJ.B.Vuillaumeの2人です。Lupotの弟子のGand、Bernardelの2人も有名です。
ドイツにはAmatiの少し前に、Jacob Stainerが名器を作り出しましたが、今の広いホールで弾く要求に応えられるタイプの楽器ではないので現在ではドイツの楽器はあまり重要視されていません。イギリスの楽器も同様です。
弓
フランスは楽器以上に弓の名産地です。弓で有名なのはF.TourteとD.Peccatteの2人です。更にEury、Pageot、Kittel、Sartoryなどがいます。(ここに挙げたのはいろいろなクラスが混じっているので、全てが同じクラスという意味ではありません。)
ヴァイオリンの弦や弓の毛は弾かなくても劣化します。最低でも年に3〜4回季節が変わる度に交換して下さい。私たちの場合はせいぜい1月から1ヶ月半しかもちません。そのまま使っていると音が(ついでに耳も)悪くなります。特に梅雨時は劣化が激しいです。またE線はすぐ錆びるので他の弦の半分くらいの期間で交換して下さい。弓の毛も弦と一緒に替えて下さい。
弦の交換についてですが、必ず1本づつ替えましょう。4本全部を同時に外すと魂柱が倒れます。
また弦を巻き上げるときは、駒が倒れないように駒の角度に注意して下さい。表板も裏板も魂柱のあたっている所が割れると楽器の価値は1/3くらいに落ちますので、充分ご注意下さい。弦の張り方は次をごらん下さい。
ここでは弦の交換の仕方を説明します。まず弦は「魂柱」が倒れたり、位置がずれたりしないように1本づつ交換して下さい。どの弦からでも良いですが、1本はずして交換し弦の音程を大体合わせます。次の弦をはずし、また大体音程を合わせます。こうして4本全部交換してから音程を合わせます。
弦はそろえて巻き、弦が糸蔵に触ってゆるまないようにして下さい。 全部の弦を交換したら駒を見て下さい。 |
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駒の自分の側の面が楽器の側面と表面の境の線に対して直角になるようにして下さい。駒の上の面 がこの位置より左に来ている場合は次のようになおして下さい。 | |
右手の親指と人差し指で弦を強く挟み、左手の親指と人差し指で駒を右に押します。(つまり左手で駒を押して、右手で駒が倒れるのを防ぐ) |
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駒の角度を直すのにこのスタイルで直すのはお奨めしません。なぜなら力加減が難しく、動かしすぎたとき止められないからです。 指板の下にある白い四角の板のように見えるのは、ウェッジというものでボール紙を何枚も重ねて油紙で包んだものです。これは湿気で指板が下がるのを防ぐために使っています。(楽器をしまっておく時はいつも入れておく) |
楽器の長期的なメンテナンス
楽器を何年も弾いていると少しづつ老化が進んでいきます。特に以下の3点にお気をつけて下さい。
1.楽器の胴体の手が当たるところ
ハイポジションを弾くと楽器の肩の部分に手が触るので、ニスが少しづつはがれてきます。木の生地が出てきたら、ニスを塗ってもらって下さい。手の当たるところにテープを張るのも良い方法です。古い楽器ではいつも問題になります。
2.指板
梅雨時など湿気の多いときに左手がきついと思ったら、指板の高さに注意して下さい。指板の延長線が駒とぶつかるところの表板からの高さは標準で27mmです。2mm以上下がると指がきついでしょう。分からなかったら楽器屋さんに測ってもらって下さい。
もしそのような状態になったらまずケースを乾燥して下さい。弾いている間にエアコンのドライの風をケースに当ててみて下さい。(楽器や弓にドライの風を直接当てないで下さい。)
もっと有効な方法はバスタオルか新聞紙にアイロンをかけ、熱くなったそれらをケースに入れてフタをして1時間くらい放っておいて、湿気をそれらに吸わせる事です。(その時ケースの中身は前部外に出して下さい。楽器、弓はもちろん、松やにも熱に弱いです。練習中にしておくと良いです。)つまり湿気を乾燥させたケースに吸わせる、ということです。
ケースの乾燥をしてもまだ指がきつい場合は楽器屋さんに直してもらって下さい。
もう1つは指板の弦の真下の部分がへこむことです。いつも弦を押さえているので、指板がほれてくるのです。こうなったら指板全体にカンナをかけて平らにしてもらって下さい。
3.駒
古い駒をそのまま使っていると弦の張力に耐えきれなくなってきます。一般的には駒は10年から20年くらいは持ちますが、駒の中央が曲がって、お腹が出てきたような状態になってきたら替え時です。
ニスを塗るのはその場で出来ますが、指板を上げるとか駒を新しく切るのは何日か楽器を預けないといけません。その場では出来ませんから時期をよく考えて下さい。このように楽器の状態をよく知っている、皆さんの楽器の主治医となる楽器屋さんを見つけることが大切です。
みなさんは休憩時間に楽器をどのように置いていますか?
このようにイスの背にもたせ掛けてそのままお茶を飲みに行ったりしている人はいませんか。これは自殺行為です。オケの時は色々の用事でこのイスの横を沢山の人が通り抜けます。誰かが間違えて足を引っ掛けたら楽器はどうなりますか。それに見て分かる通り弓が滑り落ちますよ。 | |
どうしてもイスに置きたいならこのようにして下さい。これならまだ被害は少ないでしょう。でも倒されたら楽器は傷つきます。一番確実なのはケースの中にしまってジッパーをかけておくことです。 |
ヴァイオリンを取り扱う上で最低限知っておいていただきたい事2つです。
1.楽器に触るときは絶対に素手でニスに触らないこと
楽器を持つときはネックを持つことです。また楽器の表面を叩いたりしないこと。(軽くてもダメです。)
他の人の楽器を見せていただく時にはこのように持って下さい。絶対に楽器の肩を手でつかまないで下さい。
2.直射日光に当てないこと
ニスが変色します。炎天下でケースを開けるのも厳禁です。
ヴァイオリンを勉強している人が悩む問題の一つに、どのような楽器をいつ買うかという問題があります。
1.どのような楽器:これはただ一言、傷の無い健康な楽器でなければ絶対ダメです。 2.いつ買うか:これは必要なときとしか言えません。 3.予算:楽器の予算というのは大変難しい問題です。結局無理しないで買える範囲で最上の楽器を選べば良いのです。また楽器と弓のバランスも大事です。よく先生、楽器屋さんと相談することです。 ◎結論:信用の出来る楽器屋さんとよく相談にのってくれる先生を見つけることです。 |
楽器の値段が上がった現在、オールド(1750年位までのもの)のイタリアの楽器などとても手が出ません。1900年代初頭の楽器でさえ良いものになると今では700〜800万位します。普通の予算だったらフランスの楽器で健康なよく音の出る楽器を探した方が良いです。高いだけのイタリアの楽器より良いという場合もたくさんあります。
弓と楽器の予算の割合は考え方次第です。楽器に出来るだけ予算をとり弓は適当なもので我慢し、後でクレードアップするのも一案、バランスをとるのも良し、弓にたくさん予算をとるのも良しです。答えにならないのですが、よく相談できる人(先生や信用できる楽器屋さんなど)を探して下さい。