ヴァイオリン弾きである私が自分の勉強と楽しみのために聴いているステレオのご紹介です。家の中のリビングと3つのレッスン室にステレオを置いていますが、リビングと私のレッスン室をメインに考えています。
第一に機器の存在を忘れられること、次に音の芯がしっかり伝わること、そして音の質感密度感スピード感が全帯域で同じであることが私の求める条件です。演奏家は会場のS席で最も良い音になるようにバランスをとっています。ですから私にとってスピーカーから出る音は広帯域で分離が良い事より、まとまりの良い事の方が遙かに大切です。そのような前提の元に集めたのが私のシステムです。
スピーカー:TANNOY Devon
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リビングのスピーカーTANNOYのDevonは以前は木のスピーカースタンドを横にしてその上に置いていました。ですがキット屋さんのホームページに出ていたTANNOYのStirlingの置き方の記事を読んで、この写真のようにスタンドの上に載せることにしました。スタンドは2つを一緒にして使っています。
Devonがなかなか思ったような音にならず、色々なインシュレーターを試してみましたが、どれも期待外れでした。
リビングに2つCDプレーヤーがありますが、MERIDIANの207 IIがそろそろ老朽化してきてあと2〜3年位しか持たないようなので、MERIDIANを出来るだけ良い状態に保てるように普段用にARCAMのプレーヤーを買いました。これにサンバレーの真空管を使ったDAC
Model2を組み合わせてみたらとても良い感じの音になりました。
といってもこのModel2を使えば全てのCDプレーヤーの音が変わるというわけではありません。私の家ではARCAMの場合には劇的に音が変わりましたが、MYRYADとMERIDIANの場合にはアナログアウトとModel2経由の音は本質的にそれほど変わりません。(MYRYADとMERIDIANのDACは割と良かったのでしょう。)
2001年にこの部屋が出来て以来、この部屋のシステムがメインになりました。2003年3月にTANNOYのStirlingを入れました。 RogersのLS5/9のよく馴染んだ音もとても魅力なので、切り替えて聴いています。
スピーカー:Rogers LS5/9
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2003年6月にサンバレーの2つのアンプ、プリアンプSV-722 Macintosh型とメインアンプSV-501SEを作りました。プリアンプは管にする必要はないというのが定説のようですが、聴いてみると音の密度の点でかなり違います。音楽の芯を伝えてくれるという点で一日の長があります。またSV-501SEは6BM8によるパワー管ドライブで今までのアンプとは違う音色です。
私は今まで6BM8、6BQ5、KT88、300Bのアンプを作りました。どれも皆良い音がしていますが、真面目に聞こうと思うと300Bの音を聴きたくなります。ただ300Bのアンプと言ってもエレキット、ヒノ、サンバレーのSV-501i、SV-501SEとどれを取っても同じ音ではありません。(更にもう1つサンバレーのSV-91Bを作る予定にしています。)300Bのこの適応範囲の広さには驚かされます。この他にも845、2A3、6CA7など作ってみたい管はあるのですが、これ以上アンプを作るわけにはいきません。
この2つの部屋にもステレオは置いてありますが現在リビングと私のレッスン室のシステムが決まっていなかったので、今はちゃんとした音出しが出来ていません。ほぼシステムも決まったので、これからこの2つの部屋のシステムを整えていこうと思っています。
寝室のステレオは大変簡単なもので、私が作ったエレキットの6BM8のアンプTU-870とALR JordanのEntrySのセットです。ソースは携帯用のCDプレーヤーです。自分の部屋で寝る時に聴くためのものですが、気楽に聴くならこれで充分です。(簡易システムが欲しい方にはこの組み合わせを推薦します。バカにできない表現力を持っています。今お使いのCDプレーヤーにModel2をつなげば良いです。)
エレキットのTU-870 |
ALR JordanのEntry S |
私はN響に入団した頃一時期オーディオにのめり込みました。その産物が未だに家で現役として活躍しています。レコードプレーヤーのLINN SONDEK、CDプレーヤーのMERIDIAN207II、プリアンプのQUAD66、スピーカーのTANNOYのDEVONです。(最初に買ったのはLINNとQUADの33と303、Devonです。)
ところが2年前にエレキットのTU-870(6BM8シングルアンプ)を借りて聴いてから物事は変わりました。それまでCDを1枚聴くと「ご馳走さまでした。」という気分にさせられていたのですが、この小さなオモチャのようなシングルアンプだと何枚聴いてももっと聴きたいという気にさせられたのです。それから2年間にプリアンプを5つ、メインアンプを5つ立て続けに作りました。その中から得た私の求める音の条件は最初にも書いたように、まず第一に機器の存在を忘れられるようなものであること、次に音の芯をしっかり伝えるものであること、そして音の質感密度感スピード感が全帯域で同じであることです。
私が以前述べた「名演奏はラジカセで聴いても名演奏である。」ということの意味をご説明します。
音楽は生命への賛歌です。常に時間に支配されながらも生きていく喜びを音で表現しているわけです。人が音楽を聴いて一番感動するのは、技術や音色、音楽性も勿論大切ですが、何といってもその演奏の生命力に対してだと思います。たとえ音色などは充分に表現されなくても、演奏の一番根幹をなす生命力はラジカセを通してでも聴きとれるのです。だからこそスペックの劣る媒体を通しての演奏を聴いて、いくらでも感動できるのだということを言いたかったのです。
今の技術をもってすれば素晴らしいスペックを活かしたものは作れるはずです。ですがその方法論のところで人間の素直な感覚がどこかに忘れられてしまっているように感じます。今のスペックが良いといわれる製品を聴くと、密度が薄く音がつながっていないのです。要するに音が充実していないのです。是非新しい技術を活かして誰にでも聴いて納得できる、そして演奏家が聴きたくなるような音を聴かせて下さい。