楽譜の製本 


楽譜

新しい曲に取り組む時、まず楽譜を買ってきます。そして練習を始めると、必ず譜面に書き込みをしないといけません。この書き込みを買ってきた新品にすると、しばらくするとオリジナルの譜面のディナミーク、フレージングやフィンガリング、ボーイングなど書き込みで分からなくなってしまいます。それにレッスンの時には先生が書き込みをします。しばらく経ってもう一度その曲を弾こうと思うと、オリジナルの楽譜がどうだったのかが分からないような状態になっています。そうなるともう1冊楽譜を買わないといけなくなります。(年月が経つと、同じ曲でも考え、感じ方が変わり、フィンガリング、ボ−イングは変わります。その時またコピーして製本し、昔の譜面は参考に残しておくと良いでしょう。)


コピー

普通の楽譜はA4より微妙に大きいです。特にオーケストラの楽譜はケースのカバーに入れるのは大変です。実用上からどちらの場合もA4に縮小して両面コピーして製本するのがお奨めです。(オーケストラのパート譜でもA4なら見難くならないです。)

ソロの譜面はほとんどの場合95ないし96%に縮小すると良いです。オーケストラのパート譜については物によってかなり大きさが違うので、毎回トライするしかありません。

出先で練習する時には、B5に縮小するとケースの譜面入れにもすっきり収まります。譜めくりの都合で3ページを一度に見たい場合は、B5にすると譜面台にも載ります。ほぼ暗譜している時はA4ではなくB5で充分でしょう。

普通のコピー用紙では薄くて手触りが悪いので、厚手のコピー用紙を使うと良い感じになります。厚手のコピー用紙は大きな文房具店で買ったり、プリンターメーカーのサイトで厚手の上質紙を買うのも手です。(私はOKIのプリンタを使っていることもあり、必要な時はOKIの厚口の上質紙を使います。この厚口紙、丈夫なのでシステム手帳の月間リフィルもこの用紙を使っています。)


製本

製本する方法には、紙テープ(紙絆創膏)を使う方法と製本機を使う方法があります。


上がリング式、下が紙バン式
糊式製本ではこのように平らには開きません

私は枚数が少ない時は(枚数にして10枚くらい、つまり20ページくらい)紙テープを、それより多い時は製本機をお奨めします。気をつけてすれば何枚でも紙テープで製本出来ますが、20枚40ページくらいになると段差がつかないようにする手間が大変です。

製本機には糊式とリング式があります。糊式の欠点は、譜面が平らに開かないことです。リング式の欠点は糊式に較べて高価なことです。製本を頻繁にするならリング式をお奨めします。私が使っているのは10年以上前に手に入れたワイヤバインダー3というものです。
リング式製本機の場合は表紙をつけた方が扱いやすいです。私はその表紙には糊式製本用表紙の糊の部分を切り落としたものを使っています。


紙バン(紙絆創膏)式製本

 レッスンの時にコピーした譜面を大判のスケッチブックに貼って持ってくる方がいますが、重くて大きくて取り回しが悪いです。私がN響の先代の譜面係の方に教えていただいた製本の方法をご紹介します。(当時は両面コピーはできなかったので、表と裏をプリットで貼り付けるという面倒な作業が必要でした。今は拡大縮小も両面コピーも簡単に出来ます。)
1.譜面を元の譜面通りに両面コピーします。(片面コピーした場合は、表と裏を貼り合わせます。貼り合わせる場合、4辺全部をのり付けするのではなく、長辺の方だけをのり付けします。)


片面コピーの場合は、
このようにスティック糊で貼り合せる

2.両面コピーした譜面を最初から2枚とり出し、紙絆創膏で貼り合わせます。布テープやセロテープはお奨めできません。

2の裏は1ページ、3の裏は4ページです。
2ページと3ページの間に上の写真のように紙バンを貼ります。
実際には紙バンははみ出さないように切ります。
(写真では見えないのでわざとはみ出して貼ってあります。)

3.次の2枚(5,6ページの分と7,8ページの分)を同様に紙バンで貼り合わせます。
 以下同様にすべてを2枚ずつ貼り合わせます。最後が1枚になった場合はそれもその前のブロックにプラスして貼り合わせます。
4.2枚ずつのブロックを貼り合わせ、最終的にすべてを貼り合わせます。
 2枚ずつに分ける理由は、貼り合わせる時に左右の高さが違い過ぎると、隙間なく貼るのが難しいからです。
5.最後に下の写真のように外側に紙絆創膏を貼って完成です。

見難いですが、紙絆創膏を貼ってあります。
これを貼らないと、内側の紙バンがベタベタ貼り付きます。
枚数が多い場合は巾広のものを使いましょう。

 コピーする時のコツとして、A4に楽譜をコピーする場合は100%ではなく96%位に縮小してコピーした方が良いでしょう。

 全集物のようにページ数がとても多い場合は、紙バン式は手数がかかり過ぎて大変です。紙バン式はせいぜい10枚(20ページ)位まででしょう。それより多い場合はリング式の方が良いです。


大昔(多分20年位前)に作った紙バン式の製本
まだ両面コピーができなかった頃なので
片面コピー60枚を2枚ずつ貼り付けています
背中に貼った紙バンが経年変化で剥がれてしまいました
こういう製本が多くなったのでワイヤバインダーを買いました

紙バン式製本は20年経っても背中だけ張り替えれば充分実用に堪えます。(布テープやセロテープは劣化が速く、すぐに使えなくなります。)

私がのり付け式の製本機を使わないのは、譜面が完全に開かないからです。その点についてはリング式が最高ですが、リング式製本機はかなり高価です。

 私はソロのコンサートの時には譜面をB5に縮小コピーして、それにボーイング・フィンガリングを書き込んで持ち歩いています。紙バン式の譜面は薄いですし、B5にしてあるので楽器ケースにもキレイに納まります。譜面台に楽譜を載せる場合はA4判を使います。

下の写真はHenle版のYsayeの無伴奏ソナタの譜面です。譜めくりが簡単にできるよう、見開き3ページになっています。これは第6番のソナタですが、最初の3ページを弾いた後譜面をめくると、あとの3ページが見られます。つまり3ページ目の最後の休符の時にめくれば、1回の譜めくりですむわけです。

左はオリジナル、右はそれをB5に縮小したものです
B5にする最大の問題は、譜面が見えるかです?
譜面を読みながら弾くには少し小さいです
ほぼ暗譜して、ガイドとして使うならOKでしょう
 
オリジナル、A4、B5の大きさの違い
オリジナル→A4はあまり違いませんが、
A4→B5はかなり違います
 
このような譜面の編集は紙バン式の独壇場。リング式の出る場はありません。ですから枚数が極端に多い譜面をあまり作らないのなら、紙バン式で充分です。でもピアノソナタとか20分以上の曲集を製本するなら、はるかに短い時間で出来るので、製本機の方が良いです。

IMSLPの楽譜

IMSLPの譜面をダウンロードしてプリントすることもあると思いますが、そのままプリントすると端が切れてしまうことがあります。(ト音記号が欠けたり、段の最後の小節線が欠けたりします。)プリントの画面でプレビューを見て、譜面全体が入るように少し縮小(95%とか96%)すると良いです。これは譜面をコピーする時にも使えます。(譜面はA4より少し大きいので)

左のプレビューを見ながら赤丸のところに縮尺を入れて下さい
この場合は95%ですべてが入りました