練習法 


練習について

通して弾く練習と部分練習についてです。私は練習には2つの要素が必要だと思っています。
1.部分練習
それぞれが弾けるようになるためにはまず部分練習をしなければ行けません。それも実際のテンポの半分くらいのテンポに落として、表情は速く弾くときと同じにして練習すべきです。
2.通し練習
これは誰もが練習というとやる形です。ですが通し練習はもっと徹底してやらなければいけません。通しの練習の時は絶対に止まらないで弾くようにしなければいけません。間違えても絶対に止まらないで何とか切り抜けることです。
この2つの練習法を両方ともやらないと弾けるようにはなりません。

一番いけない練習法
初めからただ弾いていき、間違えたらちょっと止まって直して出来たらその先を弾いていく。また間違えたら同じことの繰り返し。これでは部分練習にも通しの練習にもなっていないのです。


速い部分の練習法

ここでの様な速くて難しいところをどうやって練習するかを説明します。
まず最初に16分音符のところは8分音符にしてゆっくりと弾いてみます。
それで弾けるようになったら、同じところを次の4種類のリズムで弾いてみます

どんなところでもこれで弾けるようになったら(リズミカルにちゃんとしたテンポで弾ける)次にこれをフォールテでスタッカートで弾いてみるのです。これを毎日欠かさずやれば難しいところも克服できます。(1つのリズムは1日1回で良いです。そのかわり正確に。)
もとのリズムがのような場合は、
リズム変奏は次の形になります。


ストレッチ体操

私はヴァイオリンを弾く前にストレッチ体操をしています。これは気持ちも良いし、気分転換にもなってとても有効です。

1.全身
頭上で手を組んで全身を伸ばす
2.体側
1の体勢で、足をもっと開き、ヒジを伸ばして体を左右に倒す
3.背中
手を組んで前に出し、肩甲骨の間を広げる
4.胸
手を後ろで組み、その手を少し上に上げて胸を開く
5.肩
片腕を体の前に上げ、反対の腕で挟むように手前に引く
6.足のつけ根
両足を前後に開き、腰を下ろしていく
7.腰
床に座って、片足をもう一方の足の外側に置き、上体をひねる

これは鈴木正成氏(筑波大教授)著の「ダンベル・ダイエット3」(扶桑社)という本に載っているダンベル体操の準備体操です。ヴァイオリンを弾くには5番まででも良いのですが、折角やるなら全部やったほうが体のためになります。体を柔らかくしてから練習したほうが能率が良いですよ!


ロングトーンの練習

 ロングトーンとはこのように同じ音を長く引き伸ばす練習です。この練習によって弓のスピード、圧力をコントロールすることを覚えられます。まずこれを普通 の大きさでゆっくり弾くことから始めます。さらに
1.ヴィブラートをかける
2.始めから終わりまでfpで弾く
3.一音ごとにcrescendo diminuendo又はdiminuendo crescendoで弾く。
4.一音の中でcresc. dim.又はdim. cresc.をつける
など色々のヴァリエーションが考えられます。テンポは四分音符が1分間に60位のゆっくりしたテンポでして下さい。
 ソロの練習の時に限らず、オケの練習の初めにこれをやるのも良いと思います。この練習をちゃんとやると、弓が思ったよりずっと長いものだということを感じられますよ。


ボーイングの練習

 毎日のボーイングの練習は上に書いたロングトーンの練習が基本になります。上に書いた4つのヴァリエーションをやると良いです。その時大切なことは弾く時の条件をよく知っておくことです。その条件は3つあります。
 1.弓のスピード
  速く弾くと f 、遅く弾くと p
 2.弓の圧力(重さ)
  重さをかけると f 、軽く弾くと p
 3.弓の接触点
  駒に近づければ f 、指板に近づけると p
です。これは誰が考えても分かることです。ですが、たとえば駒の近くを弓のスピードを上げて力をかけて弾くと音はつぶれてしまいます。また指板のそばをゆっくり重さをかけないで弾くと音は死んでしまいます。 f で弾く時は弓のスピードを上げて重さをかけた場合は接触点は指板の方に移さないと満足な音にはなりません。また駒の近くで重さをかける場合は弓のスピードは落とさないといけません。駒の近くを速く弾く場合は重さは軽くしないといけません。更にこの3つの方法をやってみればすぐ分かりますが、この3つの弾き方の音は同じ f でもキャラクターは全然違います。この3つの条件の組み合わせをどうするかが音色の変化を表現するための秘訣です。


ヴィブラート

 ヴィブラートは大きく分けて手首からと肘からの2通りのかけ方があります。肘からのヴィブラートの方が幅が大きいので、強い幅広いヴィブラートがかけられます。どちらのヴィブラートの場合もヴィブラートがよくかけられるためには楽器の支えかたがとても大切なファクターになります。楽器を顎で強く押さえると楽器が腕の動きにつられて動いてしまい、安定してかけられなくなってしまいます。楽器を柔らかく包むように支えて、顎で押さえつけないことです。(この時左肩を少し前に出すと楽器を支えやすいです。)


シンコペーションの弾き方

 シンコペーションのリズムをどうやって弾くのでしょうか。たとえばブラームスの3番の第1楽章などシンコペーションがたくさん出てきます。

 これは第1楽章冒頭のヴィオラのパートです。この速い2拍どりの曲でシンコペーションのリズムを取るのに8分音符単位 に拍子を勘定して1つおきに弓を返すなどというのは、出来るわけがありません。こういうリズムをものにするためには、まずゆっくり6拍どりでシンコペーションのリズムを歌ってみます。それから2拍どりの中でこのシンコペーションを歌ってみるのです。
 シンコペーションはパターンとしてまとめて弾くのであって、「タタンタンタンタンタンタ」などと考えながらシンコペーションが弾けるようになるのではありません。(どんなに頑張ってもこの曲に合ったテンポでそのようなことを何小節も続けられるはずがありません。)
 たとえばこのブラームスの3番の冒頭を弾くとしたら、指揮は必ず2拍振りになるはずです。その2拍のきっかけでちゃんとこのシンコペーションを歌えるようになれば、このリズムはすぐ弾けます。上達のコツはこのリズムを丸ごと覚えることです。